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(どうして……!?)
私の頭の中は、軽いパニックになっていた。
そもそも、こんな一般のフロアに、社長が来ること自体がない。
なのに、他の社員達がいる前で、堂々と、私の名前を名指しするなんて……。
(社長……何を考えてるの?)
激しく動揺する私とは対照的に、いつもと変わらない冷静な表情で、東条社長は、どんどん私に近づいてくる。
(まさか……この場で、私達のこと、公表しちゃうわけじゃないですよね?)
そんなことしたら、確実に、社内が騒然となる。
ただでさえ、あの若さで異例の昇進を重ねて、社長になった人。
噂に、事欠かない彼。
それが、こんな一般の社員とプライベートで会ってるって、知られたら……。
(それでも、いいんですか……?)
彼の靴音が、もう間近まで、近づいてきた。
これから何が起こるのか分からない焦燥感に、視線をフロアの床に落とす。
私の目の前で、彼の足が止まった。
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