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エレベーターの突然の、キス……。
あの時の感覚が、急に溢れてきたけど……そっと記憶の奥に、押し込める。
「……は、はい!その……夜景も綺麗だったし、カクテルも美味しくて」
「そう。あの店は、夜景も、カクテルも魅力です。だが……」
一旦、そこで区切ると、東条社長が言った。
「綾瀬さんのくれたチョコレートが、一番美味しかったですよ」
予想しない一言に、胸が、どくんと鳴る。
そんな私の反応を知ってるのか、甘い言葉が続く。
「また、食べたい」
(……えっ?)
スマホ越しに聞いている声なのに、両頬が、一気に熱を帯びた。
「あ、あの、私……っ」
テンパる私と対照的に、冷静な社長の声が響く。
「申し訳ないが、今、他社の社長達を交えた会合に向かっている最中です。もう切ります。では、また」
それだけ言うと、東条社長の電話は切れた。
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