総務部の元カノ

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「佐倉さんとは…昔付き合ってたんだ…」 頭に割れるような痛みを感じた。 主任と佐倉さんがただの同僚というわけではないということは、予想はできた。 でも、主任本人の口から言われると予想が確信に変わって、佐倉さんと主任の関係が事実として私に重くのしかかった。 私はつくづく情けない女だと思う。 自分にも居たじゃないか、和也という昔の恋人が。 それに、私はついこの間まで和也に未練タラタラだった。 好きだと言ってくれる主任に目もくれず情事が終わった後別れを告げた和也に夢中だった。 人間は本当に身勝手な生き物だと思う。 自分は良くて相手はダメなんて、そんなことあり得ないのに……。 『はい、何となく予想してました!』って主任に明るく振舞えればそれでいいのに、私はそれができない。 醜い感情の塊が瞳から零れる涙に変わって身体の外に次から次へと溢れていく。
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