総務部の元カノ

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その夜、『部屋に上がっていきますか?』と聞くと『もう遅いから今日は帰る』と言って主任は帰って行ってしまった。 玄関のドアノブに手をかけて帰ろうとした時、主任がくるっと振り返って言った。 「あとさ、もう一つだけ言ってないことがあるんだ…」 優しい眼差しとは対照的な意味深な言葉に胸がドクッと音を立てた。 「なっ…何ですか?」 身構えて尋ねる私の頬をゆっくり撫でて、主任は最高に優しい声で言った。 「佐倉さんと別れて身も心もボロボロだった俺を救ったのは明なんだ」 「えっ…?」 主任の言ってることが理解できず、私は首を傾げた。 すると更に主任は続けた。 「社食でよく明を見かけてさ、いつもキラキラした笑顔をした明を見てると何故か心が癒された。それから度々明を見かけると目で追っててさ、いつしか見てるだけじゃ我慢できなくなって今に至るって感じかな…」 嘘…。そんなこと初めて知ったよ…。 「ずっと前から俺は明のこと好きだったよ。ごめん、何か重いな俺。男のくせに、気色悪い…。」 「そんなこと…」 「明…俺のこと好きになってくれてありがとう。絶対後悔させないから…まだ傍にいてくれるか…?」
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