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「明…?いるなら、開けて」
この状況で、開けるのはかなりまずい。
お化粧は剥げちゃってるだろうし、涙に濡れた髪はきっとボロボロだ。
長いこと座り込んでたせいで、タイトスカートのスーツはしわになってるに違いないし、玄関には鞄から飛び出た資料や手帳やお化粧道具が散乱している。
主任がドアを開こうとして、ドアノブがガチャガチャと音を立てて、鍵をかけておいて本当に良かったと心の底から安堵した。
「あ…の…」
あまりに激しく動くドアノブに、少しを恐怖を感じながらも、私は声を振り絞った。
「今日は…帰ってください…」
「はぁ…?」
「だから…今日は、もう遅いし…」
「はぁ?明、何言ってんの?今日、俺と約束してたよな?」
主任の低い声に先ほどの佐倉さんの姿を思い出して、恐怖からぶるっと身震がした。
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