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「何が…?」
あまりの痛みに、心臓が押しつぶされてしまいそうだった。
「帰って下さい…」
「……」
「今日は、主任と話したくないです……」
今すぐドアを開けて、主任に抱き付けば胸の痛みも緩和されるのかもしれない。
自分の気持ちに素直になって、甘えることができればこの場を上手く過ごせるかもしれない。
しかし今、頭の中は佐倉さんのことでいっぱいで、主任と話す余裕がなかった。
私の言葉を聞いたきり、主任はしばらく黙り込んでいた。
重苦しい沈黙が続く中、ぽつり主任が呟いた。
「あっそ…分かった。明が、そんなに聞き分けない奴だとは思わなかった」
そう言葉を残すと、主任は呆れて帰ってしまったんだろう。
カツカツと廊下に響く革靴の音が次第に遠のいていった。
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