今カノVS元カノ

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今日、佐倉さんに言われたことは私の胸の内に秘めたままにしておこうと思っていた。 「いや…それは…」 本当は全て言ってすっきりしたかったけど、佐倉さんとは今後も会社で顔を合わせることになる。 だから、主任の仕事の妨げになることだけは嫌だった。 「言えよ…明」 だけど、その真剣な表情にこれ以上だんまりを決め込むわけにもいかず、私は話し出した。 「別れてって言われちゃいました…」 「……」 正直に話すと、主任は何も言わずぎゅっと抱きしめてくれた。 「…ごめん。嫌な思いさせて」 「いえ、私は大丈夫ですよ…」 『大丈夫』それは便利な言葉だ。 しかし、この便利な言葉すら主任には通用しないらしい。 私の心の中を覗いたように言った。 「大丈夫なわけないだろ?もっと、言いたいこと言えよ」 「……」 「腹にため込むな。俺にはちゃんと明の気持ち言って欲しい」 そんな主任の優しさに今日は甘えてしまった。 主任の言葉を聞き、私の瞳から次から次へと熱いものが零れていく。 「…ごめんなさい」 「謝るなよ…」 「大好きです…」 「はは…。俺も好きだよ」 「ずっと一緒にいてください…」 「明がいてくれるなら、ずっといるよ…」 欲しい言葉をすぐに返してくれる主任。 温かい大きな手が背中を擦ってくれる。 「嫌な思いさせてごめんな…」 涙が止まらなかった。 主任が愛おしすぎて。
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