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しかし、その気持ちは瞬く間に消えてしまった。
会社を出てすぐの交差点を渡ろうとした時だった。
「あれ~?新村君と明ちゃん!」
後ろから声がして振り返ると、私たちのもとに駆け寄ってくる人影が見えた。
次第に人影が鮮明になっていく。
「やっぱりそうだ!二人ともお昼?」
……佐倉さん。人影の正体は新村主任の元カノ、佐倉麗子さんだった。
スタイル抜群の彼女だから似合う細身のパンツスーツに艶々光る茶髪の髪を靡かせて、私たちの前に登場した佐倉さん。
私は、この前の主任の話を思い出して彼女に対して変に身構えてしまった。
「明ちゃん…だよね?」
「はい…」
「やっぱり!私、可愛い子の名前は忘れないんだ!」
「はあ、そうなんですか…?」
「ねっ?これから二人でお昼なの?」
「えっ…いや…」
答えにつまり、ふと主任の顔を見ると彼は面倒くさそうに言った。
「そう、これから二人で会議を兼ねた昼飯」
「へぇー、会議?営業部は大変なんだねー、お昼まで上司とご飯なんて」
キラキラした笑顔を浮かべる佐倉さんの前で、私は何とも不細工な愛想笑いしかできないでいた。
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