131人が本棚に入れています
本棚に追加
「仕事以外では俺にも近づかないでほしい。明を悲しませたくないんだ」
「分かったわ」
聞き分けのいいふりをする。
『麗子』と呼んでくれていたその声は、もう違う女の子の名前を呼んでいる。
それが耐えられなかった。
「分かってくれて、良かったよ。じゃあ、俺もう行くから」
晃はそう言い残すと、さっさとその場を出て行ってしまった。
時間にして十分。
たったそれだけの時間。
長いこと私なんかといたら、明ちゃんが悲しんじゃうもんね。
『明、明』って何度も言っちゃってさ、『めーめー』羊かってーの。
不意に、頬に手をやると、熱いものが伝っていた。
何これ、私泣いてるの?
最初のコメントを投稿しよう!