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アントワーヌは自分の城に戻され、主治医がつきっきりになっていた。
心配した良はアントワーヌの城に行った。
執事がお茶を出してくれた。
「プリンスは、ご両親を亡くされ、双子のシスターも亡くされ、孤独なんです。お友達になってあげて下さいませ」
「フィリップがいる」
「フィリップ様は家臣でございます。プリンスには普通のお友達が必要です」
良は黙って聞いていた。
良はアントワーヌの部屋に通された。
アントワーヌはキングサイズのベットにシルクの寝部屋着姿で上半身を起こした。
「どう?具合は?」
良が優しくきいた。
「水が苦手なんだ。妹を水の事故で亡くしたんだ」
「そう」
良は悲しい気分になった。
「また、来るよ」
「ここにはもう来ないでくれたまえ」
アントワーヌが良の背中越しに言った。
「僕が嫌いなの?」
良はアントワーヌの顔を覗きこんだ。
アントワーヌは黙ってベットに潜り込んだ。
良はため息をついた。
執事が帰る様に促した。
良は、アントワーヌの底しれぬ悲しみが伝わった。
良はその夜、アントワーヌの部屋の下で、バイオリンを静かに奏でた。
アントワーヌは黙って、良のバイオリンの音色を聴いていた。
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