俺の日常

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「響一。」 「何。」 「俺の名前は、お前じゃない。」 響一はそう言った。そう言ったから、俺はきっと俺がした事をされるのかと、むしろそれの何倍も何十倍も、いや、何千倍もきつい辛い、そしてきっと凄まじい快楽を俺に味わわせてくれるのだろうと、そんな様々な想像が巡り巡っていたところに訪れてこんな無垢で、こんな単純で、こんな愛しい行為をしてくるとは、夢にも願望でさえも思っていなかった。 「お前って、手繋ぐの好きだったっけ?」 「うん。」 「へえ、そうなんだ。」 「知らなかった?」 「知らなかった。」 なんだ、そんな事、そんな単純な事、そんな簡単な事、そんな愛しい事、なんでもっと最初から知らなかったんだ。 「盗聴しててわかんなかったの?」 「盗聴なんてしてないよ。」 「盗聴してたじゃん。」 「盗聴なんてしてないわ。」 「盗聴してたからこういう状況になったんじゃないの。」 「盗聴ってどうやるんだよ。」 「盗聴してたじゃん。散々。」 「盗聴なんてしてないんだって。」 「盗聴ってさ、どうやんの?」 盗聴なんて、やれるもんなら、お前が生まれた時から、お前が俺の傍にいてくれた時から、やれるもんならやってたさ。 全部全部、知りたかったんだ。全部全部、俺のものにしたかったんだ。 「機械とかいらないでしょ。」 「聞こえちゃうもんね、全部。」 「物音立てる事だって出来るんだぜ。」 「え?」 「あ?」 「あれってわざと?」 「あんな大げさな音、普通立つかよ。」 「そうだね。」 「そうだよ。」 色んな事がわかって、色んな事を伝えて、色んな事を一緒にして、そして二人は繋がっていく、そして二人でいる事が当たり前になっていく、それが一番自然で、一番幸せな事なのだろうと、俺は響一の体温を感じながら、しみじみそう思った。
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