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「私はどうしたらいいんですか?」
紫苑のキラキラと眩いばかりの笑顔に、桜子は目を細めながら返事をした。
この人は通常時でも発光してるんじゃないかしら。
「常葉の隣に座ってくれたらいいと思うの。常葉を見ていたらいいわ」
「僕適当だし裏千家だけど」
「私は表だけど別に適当でいいわよ」
「うら?おもて?」
きょとんと首を傾げる紫苑を、不覚にもかわいいなと思ってしまった桜子は、朱色のふくさを持ち上げた。
「表千家のふくさを用意してくれたのはたまたまだったのね?」
「あっ、お店で適当に見繕ってもらいました!真っ赤なのもあったんですけど、朱色のほうが優しい気がしたんです。表と裏では色が違うのですね?」
お店とやらも見繕うのが大変だったろうなと、店員さんに同情する。
「まぁ、そんな些細な違いらしいわ。
ようは美味しくお茶が飲めればいいのよ」
美味しく頂くのが一番というおばあちゃんに教えてもらった桜子は、あまり小さなことは気にならない。
しかし、紫苑は未知の世界に目をキラキラと輝かせている。
「抹茶を点てるって言うのはカプチーノみたいにするんですよね!」
「あっ、それは裏千家。
表千家だと景色が出来るのよね……でもカプチーノ状の方がまろやかだからはじめは飲みやすいかも。常葉に点ててもらう?」
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