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「間接キスだね」
桜子が飲んだ椀を大切そうに両手で包むと嬉しそうに飲んでそう言った常葉を、桜子の冷たい視線が突き刺した。
「普通でしょ。それに拭ったし」
「それでもなんだか嬉しいっていうのが、恋するってことなんだと思うな~」
「……」
勝手にひとりで色惚けしていろと、桜子はみそまんじゅうにかぶりついた。
紫苑の為に買ってきたのに、紫苑はいない。
今日中には戻っても来ないのだろうか。
おいしい長屋のみそまんじゅうには、保存料なるものは入っていない。
だから、おいしいのかも知れないけれど、おまんじゅうの寿命が短いのも確かだ。
「紫苑の分は後で渡しとくよ」
「……たまには察しがいいのね」
思っていることを見抜かれたのが照れくさくて、桜子はツンと横を向いてそう言った。
けれど、そんな桜子を、常葉はなぜか嬉しそうに眺めている。
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