第4章

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「恋なんて……」 恋なんて、したこともないのに。 それなのに、なぜ旦那候補が三人もいるのだろう。 窓の外をみる桜子の視線は、自然と深い緑のなかをあの桜の木を探すようにさまよった。 そうか……こういうときの為にも、場所は教えてくれなかったのね。 寂しいような見透かされているような、妙な気持ちを抱えながら、桜子は残り少なくなった抹茶をひとくち口に含んだ。 切ない気持ちは洗い流れずに、口のなかはいつまでもほろ苦かった。 「今、誰を想ってる?」 「……なにも」 なにを、ではなくて、誰をと聞く常葉に、頭のなかを見透かされたような気がした。 苦い顔をして眉間にシワを寄せるあいつの顔が、ちらつくのを振り払うように頭をふる。 余計なことを考えてしまわないように、今日も進まない勉強でもしよう。 「常葉、私は通信の高校とかなら許される?」 許されるってなんだろう。 誰の許しが必要なのだろう。 法律上は保護者であっても、一度も顔をあわせたことことのない祖父に、なぜこんなにも遠慮しないといけないのだろう。
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