第4章

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「えっ?」 「高卒の資格くらいはほしいんだけど」 「あれ?そう言うもの?」 こてんと首を傾げる常葉の仕草が、狙ったようにあざとい。 それを半目で睨みながら、桜子は常々疑問だったことを聞くことにした。 「常葉って、大学生じゃないの?」 「大学はもう卒業しちゃった」 えへっと舌を出されても、自分と瓜二つの顔でやられるとなぜだか腹が立つ。 さきほど、二十歳と言っていなかっただろうか? 「海外だからさ、飛び級とかあるの」 「……」 なるほど、参考にはならないようだ。 と、だとすると紫苑も参考にはならないのだろう。 「じゃあ、月白さまに打診しておくよ。通信制の高校か家庭教師かー」 「……通信制のがいいわね」 レオナみたいな家庭教師では困る。 勉強どころじゃなくなってしまうだろう。 そんな桜子の心のなかを見透かしたように、常葉が大丈夫と微笑んだ。 「その時は、紫苑には選ばせないからね」 「……お願いするわ」 紫苑のことは好きだけれど、どうやら人を疑うという概念がすっぽり抜け落ちているらしい。 自分とは正反対だ、と桜子は苦く微笑んだ。
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