704人が本棚に入れています
本棚に追加
みんなみんないなくなっちゃう。
みんな私を置いていく。
コトン……
部屋の隅で小さな音がした。
誰かいたのかと、あわてて涙を拭った桜子の足にふわりと何かがふれた。
お、おばけ……は、さわれないわよね?
ピシッと固まった体をぎこちなく動かして、おそるおそる足元を見ると、そこにはふわふわの小さな子猫がちょんと座っていた。
「なんだ……子猫ちゃんだったのね」
ミャア
「どうしてこんな所にいるの?迷子?」
そうっと手を出すと、また嬉しそうにすりすりと顔をすりつけてくる。
かわいさに悶えながらも、暴れて子猫を驚かさないように自分を押さえ込んだ。
長めのふわふわとした毛の色はクリーム色で、まるで歩く毛糸玉のよう。
首輪はしていなくて、でも野良だったようには見えない。
手入れのされた毛並みといい、このなつっこさといい、どう考えても飼い猫だ。
もしや……窓の向こう森を越えたところにある古城。
あそこで飼われている猫ちゃんなのだろうか。
「子猫ちゃんお腹すいた?」
ミャア!
元気よく鳴くふわふわの毛糸玉を抱えて、桜子は自分の部屋に帰ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!