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「さくちゃーんお腹へったー」
「……減らないくせに」
「別に減らない訳じゃないよ?
食べなくても死なないけどさ……あれ?」
元気よく飛び込んできた常葉は、いつも通りノックをしない。
もう流石に諦めている桜子は、そこにはふれなかった。
「静かに、今寝たところなんだから」
「へぇー紫苑?」
「いいえ、迷子を拾ったの」
「薔薇園で迷子になってたの?」
「違うわ。部屋のなかで迷子になってたのよ」
首をかしげる常葉を横目に、お腹いっぱいになってゴロゴロと喉を鳴らしながら寝てしまった子猫の背中を撫でた。
膝の上で寝てくれるくらいにはなついてくれたようだ。
最初からなつっこかった子猫の瞳は、空のようなブルーだった。
キトンブルーだったかしら?
「ねぇ、この子飼ったらだめ?」
自分の意見も想いも通らない場所で、素直になついてくれた珠がいとおしくてたまらなかった。
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