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「何て言うか、さくちゃんって期待を裏切るよね」
楽しいと笑う常葉を、ジトッと睨んだ。
猫の名前にたまは安易なのだろうけれど、珠だと思ったんだもの。
「今時つけないよねー」
「すみませんね!若年寄で!」
「さくちゃん最高」
なにがツボに入ったのか、笑い転げる常葉の向こうでドアが軽くノックされた。
「はい」
「お待たせいたしました。こんな感じでどうでしょう?」
大きめの段ボールの上に小さなお家みたいなものを抱えた紫苑が、どうやったのか器用にドアを開けて入ってくる。
因みに、まったく待ってはいないのだけれど。
「……お家?」
「これはトイレみたいですよ?」
どうやらお家ではなくトイレだったようだ。
箱のなかには、食べ物から猫用のブラシ、おもちゃや子猫の飼い方の本まで入っていた。
もちろん、トイレ用の砂も。
「……反対しないの?」
「しませんよ。私は室内犬なんてどうかなって思っていたんですけど、桜子さんが気に入ったのならこの子を飼いましょう」
「ありがとう!この子がいいの」
「ですが、きちんと自分でお世話するって約束しないといけませんよ?」
「する!」
そのやり取りを黙って聞いていた常葉が、やっと収まってきていた笑いをまたも噴出させた。
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