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「なんだかうるさいわね」
「そうですね、子猫ちゃんの安眠の為に窓から捨てておきましょう」
にっこりと微笑んだ紫苑は、素早く常葉の襟首を捕まえて窓から薔薇園目掛けて放り投げた。
空中に浮かんだ瞬間のぽかんとした常葉の顔をみて、笑いが止まらなくなった桜子の膝が揺れて、珠がぴょこっと頭をあげる。
「ぁ、ごめんね?」
優しく背中を撫でてる桜子の目尻には笑いすぎて涙が滲んでいる。
それを人差し指で拭うと、紫苑が甘く甘く微笑んだ。
「桜子さんは笑っているのが一番愛らしいですね」
「……常葉がおかしいからよ」
愛らしいなんて真顔で言う紫苑から、顔を背けて唇を尖らせた桜子の頬は、ほんのりと桜色に染まっている。
「ちょっと、なに僕を差し置いてさくちゃんとイチャイチャしてんのさ」
「おや、お戻りが早いですね」
「あら、戻ってきたの」
二人して酷すぎると部屋の隅でいじいじする常葉を完全に放置して、紫苑と桜子は珠をかまう。
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