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「……分かったわ。なにを着ていったらいいのか教えてくれるとありがたいんだけど」
山ほどあるワンピースやドレスのなかから、少しでも当たり障りがないものを着ていきたい。
第一印象が最悪では、流石に不味いだろう。
諦めたような桜子の為に、紫苑がかいがいしく世話を焼く。
それを黙ってみていた常葉は、フワリと風に揺れる桜子髪を指ですくっては巻き付けて遊んでいる。
「明日は僕がヘアメイクしてあげるね」
「……よろしく」
出来るのかと聞きかけた桜子は、どうせこの器用な人たちのことだ、美容師並みにセットも出来るのだろうと丸投げすることにした。
デニムにポニーテールなんかで会いに行ったら、きっと渋い顔をされるのだろう。
その時、桜子の胸のなかには明日への不安と、微かな……本人が認めたくはないほど微かな期待があった。
それを、それとなく気がついているのは、桜子本人ではなく良く似た容姿をしている従兄だけ。
その想いが粉々に砕かれてしまうことへの懸念と、常葉本人も蒼子にそっくりの桜子にあった時に、彼女の祖父がどんな対応にでるのかという未知数に賭けたい気持ちも少なからずあった。
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