第4章

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「よっし!プリンセスの完成!」 満面の笑みの常葉は、なんでかとても誇らしそうだった。 常葉の作品になった気持ちがすると桜子は、大きな鏡の前でクルリと回ってみる。 「……馬子にも衣装」 「それ、誉め言葉じゃないし、自分でいうことでもないからね」 「だって……」 レースの白いワンピースと、桜色のパンプスは紫苑の見立てだ。 髪には同じく桜色のリボンが編み込まれていて、後ろで大きな蝶々結びにしてある。 寝不足と緊張で色をなくしていた頬には、常葉のマッサージのおかげで薔薇色が戻っていているし、リップを塗った唇はほんのりと色づいて女の子らしい。 「……ありがと」 「どういたしまして。さてと、あちらまでエスコートさせて頂きますね」 パチッとウインクしてみせた常葉をみて、なかなかの胡散臭さだと思わず笑いそうになる。 「ごめんね、少しお留守番していてね?」 自分の為に用意されたベッドではなく、桜子のベッドでまるまっている珠の背中を優しく背中を撫でると、もう一度鏡を見て気を引き締めた。 自分の祖父に会うだけで、なぜこんなに着飾らなければいけないのかと、言いたくなったけれどそれは飲み込んだ。 きっと、常葉を困らせるだけだ。
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