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無言でいきなり振り上げた杖が、空気を切って唸ると一番手前に立っていた青藍の頬を打った。
息を飲んで目を見開くことしか出来ない桜子の前で、次々と紫苑と常葉の頬にも杖は唸りをあげた。
「躾がなってないぞ」
「「「申し訳ありません」」」
きっちり合った三人の声に含まれるのはなんだろう。
カツンと杖が床に当たった音で、桜子の体がビクリと跳ねた。
しかし、そんな桜子に目を向けることすらせずに、クルリと踵を返して部屋を出ていく。
その後ろでキッチリとドアが閉まるまで、三人は直立不動を貫いていた。
口元を押さえて崩れ落ちた桜子を、咄嗟に一番近くにいた青藍が抱えた。
「さくちゃん、大丈夫だよ。さくちゃんはなにも悪くない」
後は、走り去る車の音を聞いて常葉が口を開くまで、部屋のなかは音をなくしていた。
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