第4章

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桜子のイメージする怖いおじいさまは、まだまだ甘いのだと、思い出すだけで震える今日の月白さまの姿は 桜子の心に大きな傷跡を残した。 自分があの杖に打たれた方がよかったと、口の端が切れて血の滲む青藍の頬に触れた。 少し痛かったのか、青藍の眉間のシワが深くなる。 ごめんなさいと繰り返す桜子の唇に、青藍は頭を横に振る。 「お前のせいじゃない。 それに、俺たちは慣れている」 じゃあ、あの杖は体を支えるためでもファッションでもなく、青藍達を痛みつけるために持っているのだろうか。 あれだけ人間離れした動きをする青藍たちのことだ、避けようと思えば簡単には避けられた筈なのに。 この傷も簡単に治せたりはしないのだろうか。 「月白さまの気が込められているからねー。簡単には治んないんだよ」 痛みくらいは緩和できるからさ、心配しなくていいけど顔は目立つからやめてほしいよね? 笑いながらそう言う常葉の頬を見て、また桜子の瞳に涙が溢れた。
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