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「……すまなかった」
桜子が震えたことに気がついたのかいないのか、それ以上近づかずに、そう言うと音もなく部屋から出ていく。
その後ろ姿を眺めながら、初めて会った東雲の祖父に、背格好が似ているような気がした。
「桜子さん、今度桜餡入りのおまんじゅうっていうのを持ってきますね」
とても可愛らしい色をしていたんですよ。
微笑みながら桜子の手に、あたたかなカップを持たせた紫苑は、そのまま包み込むよう桜子の手をなでた。
「そんな悲しい顔をしないでください。
明日にはきれいに消えてますから」
「だって……そんな綺麗な顔なのに」
美術品に傷を付けたような気分だ。
青藍の頬にあった傷は、今も手のひらでズキズキと痛む。
「私達より桜子さんの手の怪我の方が心配ですよ。痛み止めを用意しないといけませんね」
「氷は?」
「溶けちゃってますね」
常葉が、つまみ上げあげたビニールの袋は水滴をつけてへにゃりと潰れた。
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