704人が本棚に入れています
本棚に追加
泣き疲れて、声が枯れ果てても
涙というものは、なかなか枯れないものらしい。
泣きすぎて腫れぼったくなった瞼や、涙で霞む瞳。
拭いもしないで流れつづける涙の筋がいくつもついた白い頬。
雨戸も締め切った部屋のなかで、もう何日泣き暮らしているのか、桜子自身にも分からなくなっていた。
カチコチと時を刻んでいた時計は、畳の上に取り出された電池と共に転がっている。
その隣では、電源を切られて只の小さな板と化したスマートフォンも落ちていた。
毎日、小さなこの家の主がめくっていた日めくりは、めくられなくなったその日で、時をとめている。
最初のコメントを投稿しよう!