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「橘の?あそこに子どもはなかったはずですよ」
「隠し子だそうだ。まだ調べがついてないが、純血だと」
「そんな!今はもういない筈じゃ……」
「だから調べている」
「もし、純血であったなら……」
「月白さまは養子にするだろうねー」
黙って青藍と紫苑の言葉を聞いていた常葉が、緊迫した空気を壊すように緩い声を出した。
けれど、声とは裏腹に常葉の顔にも緊張が見てとれる。
「そんなっ!」
悲鳴のような声をあげて、両手で顔を覆ってしまった紫苑を見る青藍の瞳にも苦渋が滲む。
「そんなやつ、僕は認めない」
「お前が認めなくとも、純血であれば文句は言えない」
「桜子さんはどうなるって言うんですか!」
帰る場所すら奪って軟禁しているというのに!
声にならない紫苑の叫びを、青藍は黙って聞いている。
握りしめた拳にまた力が入って、手のひらに爪が食い込んだ。
「一生……日の当たらない場所に幽閉でしょ」
常葉の声が震える。
それは怒りによるものなのか、悲しみによるものなのか。
「とにかく、こいつがボロを出せばいいんだ」
どんな些細なことも見逃すつもりはないと、青藍は奥歯を噛みしめた。
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