第4章

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「橘の?あそこに子どもはなかったはずですよ」 「隠し子だそうだ。まだ調べがついてないが、純血だと」 「そんな!今はもういない筈じゃ……」 「だから調べている」 「もし、純血であったなら……」 「月白さまは養子にするだろうねー」 黙って青藍と紫苑の言葉を聞いていた常葉が、緊迫した空気を壊すように緩い声を出した。 けれど、声とは裏腹に常葉の顔にも緊張が見てとれる。 「そんなっ!」 悲鳴のような声をあげて、両手で顔を覆ってしまった紫苑を見る青藍の瞳にも苦渋が滲む。 「そんなやつ、僕は認めない」 「お前が認めなくとも、純血であれば文句は言えない」 「桜子さんはどうなるって言うんですか!」 帰る場所すら奪って軟禁しているというのに! 声にならない紫苑の叫びを、青藍は黙って聞いている。 握りしめた拳にまた力が入って、手のひらに爪が食い込んだ。 「一生……日の当たらない場所に幽閉でしょ」 常葉の声が震える。 それは怒りによるものなのか、悲しみによるものなのか。 「とにかく、こいつがボロを出せばいいんだ」 どんな些細なことも見逃すつもりはないと、青藍は奥歯を噛みしめた。
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