第4章

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桜の枝の向こうに他の木々の梢が見える。 その向こうの澄んだ青い空を、ぼんやりと見上げた。 どれだけ上に登っても、あの青は手に入らない。 おじいちゃんにも会えない。 「戦え」 「……ぇ?」 黙って煙草の煙を空へ吐き出していた青藍が、不穏な言葉を口にした。 「生き延びろ」 「……意味わかんないんだけど」 「居場所を作れ」 そんなもの……作れるものなら作りたい。 むくれて口を突きだした桜子の方へ歩いてくる青藍の背の高さは、今は別に怖くはなかった。 「敵が来る」 「……てき?はぁ?」 「ここにすら居られなくなる可能性がある」 ぞわりと肌が粟立った。 脅しでも、偽りでもなく、桜子の居場所がここにすら無くなりそうなのだと、青藍は言っている。 少し前なら、大歓迎だと思った筈だ。 追い出されたなら、帰ればいい、と思っていたのに。 ……桜子には、もう帰る場所がない。
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