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桜の枝の向こうに他の木々の梢が見える。
その向こうの澄んだ青い空を、ぼんやりと見上げた。
どれだけ上に登っても、あの青は手に入らない。
おじいちゃんにも会えない。
「戦え」
「……ぇ?」
黙って煙草の煙を空へ吐き出していた青藍が、不穏な言葉を口にした。
「生き延びろ」
「……意味わかんないんだけど」
「居場所を作れ」
そんなもの……作れるものなら作りたい。
むくれて口を突きだした桜子の方へ歩いてくる青藍の背の高さは、今は別に怖くはなかった。
「敵が来る」
「……てき?はぁ?」
「ここにすら居られなくなる可能性がある」
ぞわりと肌が粟立った。
脅しでも、偽りでもなく、桜子の居場所がここにすら無くなりそうなのだと、青藍は言っている。
少し前なら、大歓迎だと思った筈だ。
追い出されたなら、帰ればいい、と思っていたのに。
……桜子には、もう帰る場所がない。
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