700人が本棚に入れています
本棚に追加
/484ページ
「はーい、さくちゃん元気?」
元気に飛び込んできた常葉は、手に沢山の本とノートを抱えていた。
ソファに持たれて座る桜子の膝には、ごはんを食べ終わった珠がのんびりと寝そべって毛繕いをしている。
「はいはい、珠ちゃんはこっちねー」
さっと珠を抱き上げてベッドに座らせると、桜子の手を引いてテーブルの前に座らせた。
「……なにが始まるの?」
「スパルタ教育?」
「は?」
「さくちゃんは今から大忙しなんだよ?
東雲のお嬢さまなら知っていて当然の、月の鬼の歴史や力の使い方、レディとしての行儀作法を詰め込みます!」
やる気満々でおどけてみせる常葉の瞳は真剣だ。
それが、桜子がここにいられる可能性を、少しでも増やすことに繋がるのだろう。
「……普通の勉強じゃないのね?」
「それは後々ねー。
次の月の宴がさくちゃんと紅子ってやつの顔見せなんだよ」
「クコ?」
「そーそー杏仁豆腐に乗ってる赤い実ね。
じゃなくって、さくちゃんのライバル」
その月の宴で、さくちゃんと紅子のどちらが東雲の跡継ぎにふさわしいか判断するんだって。
まぁ、一回で決める訳じゃないから第一ラウンドってとこかなぁ。
最初のコメントを投稿しよう!