第5章

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「月の鬼は元を辿ればひとつなんだけどね。 そこから幾つにも枝分かれして、今の四家が力を持つようになるんだよね」 常葉のざっくりした説明は、小難しい本の文字を目で追うよりも分かりやすい。 「完全実力主義だから、代々力があるものが跡を継いできたってわけ。 だから、今回のライバル出現もわりとあることなんだよ」 桜子より紅子とやらの実力が上だった場合、桜子の立場はなくなる。 「でも、この橘って家がなかなか謎が多くてね? あんまり他の鬼とも人間ともかかわり合いを持たない人たちでさ、あっ鬼ね。 だから、本当に純血なのか本当に橘の流れの鬼なのか、まだ調べがついてないんだよね」 完全実力主義なのに、純血が尊ばれるのはどうしてだろう。 「あーそれはね、純血のが力が強いことが多いからだね。今の月白さまとかさ、蒼子さまとかね。 薄まると力が弱くなるからね」 なるほど、人間との混血である桜子なんぞ、眼中にないってことなのね。 「まー言っちゃえばね。 でも、混血だから力が弱いとは限らないよ。僕だって純血じゃないけど、五本の指に入るわけだからさ。 さくちゃんは奇跡の混血だし、かなり未知数だよねぇ」 本来、産まれることすらないと言われる、純血の月の鬼と人間の子供。 単に丈夫だってだけだったらどうしようか……
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