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「で、俺が実地担当だ」
こわい。
今までは、なにも分からなかったからか、気にもならなかった青藍の纏う青い炎が、溢れでるものが、どうしようもなく桜子を威圧する。
無意味とは分かっていながら、足が勝手に一歩二歩と後退った。
「まずお前もこの姿になれ」
威圧的な声に、桜子の肩が震えた。
あの日、封印が完璧に解けたとき以来、角を出したことはない。
「や、やり方分からないもの」
「はぁ……」
あからさまに深々とため息をついて見せる青藍に、桜子は不満の色を隠さない。
分からないものは、分からないのだ。
常葉の授業のおかげで、鬼の血が混ざる人が案外多いらしいことを知った桜子は、前よりは自分が鬼であることに抵抗を感じてはいなかった。
しかし、だからと言って力の使い方が分かるようになったわけではない。
子供のときから鬼としての力が開花していた訳ではないのだ。
母である蒼子の封印のおかげか、桜子はごく普通の子供として育った。
……少々気が強く、おじいちゃんっ子なせいで渋好みな気はあるけれど。
ここで月の鬼として英才教育を受けてきた青藍たちと一緒にされては困る。
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