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「桜花の蒼は月の鬼の終わりと始まりの知らせ」
「えっ?」
「言い伝えだ。
だからこそ、月白さまはお前を遠ざけたがる」
意味が分からないと顔をしかめる桜子の、まだフワフワと宙を漂う髪を、青藍の長い指が絡めとる。
「衰退し消えさるまえに、一度根から壊さなければいけない。
しかし、それは月白さまが今まで守って来たものを壊すことをさす」
だからこそ、お前は驚異なんだ。
月の鬼の破壊と再生を司るのが、桜花の蒼だ。
「破壊と……再生……」
そんな大それたことが桜子に出来るわけがない。
それなのに、そんな言い伝えのせいで、桜子は実の祖父から疎まれているのか。
おじいさま、と呼ぶことすら厭われているのか。
「……ばっかみたい」
「なぜ、俺たちの名前が色から来ているか知っているか?」
話をそらす為なのか、それとも今の話の続きなのか、青藍が淡々と言葉を紡ぐ。
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