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「俺たちは鬼火をまとって産まれてくる。
その時の鬼火の色に因んだ名前をつけるんだ」
「私も……」
産まれてたときは鬼火なんてものをまとっていたのだろうか。
それなら、お母さんはいったいどこで私を産んだんだろう。
人間の病院で、桜色の鬼火をまとった子供が産まれたら、きっと大騒ぎになる。
「自宅出産だ」
「……なんで知ってるのよ」
「産まれてすぐのお前を、俺は抱いている」
「は?」
「月白さまの使いでな。祝いを届けた」
「……嘘」
縁は切っていた筈だ。
「嘘じゃない。ただ……」
「はっきり言いなさいよ」
「お前の髪と瞳の色を知った月白さまは、お前から距離をとることを選んだ」
「……そう」
それなのに、今さら引き取る気になった理由はなんなのだろう。
桜子の面白くなさそうな顔を見ながら、青藍が言葉を続ける。
「蒼子さまは、本当に幸せそうだった。
衰弱しながらも、小さなお前を抱いて、産まれてきてくれてありがとうと、微笑んでいた」
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