第5章

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「手で動かしてどうする。浮かせて元の位置に戻してみろ」 「ぇ……」 「さっき、あれを移動したのはお前だ。その力をコントロールする」 なんのための実地だ。 鼻で笑う青藍の瞳が、以前のように冷たく感じないのは、桜子が変わったせいか、それとも変わったのは青藍か。 桜子は、珍しく素直に視線をベッドへと移動すると、なんとなく『うごけ!』と念じてみた。 しかし、残念なことに重たいベッドはピクリとも動かない。 「紫苑が、この部屋を何から何まで桜色で揃えたのには訳がある」 訳? 桜子って名前だから、安易になんでもピンクにしたのかと思っていた。 それか、女の子の色ってイメージだったのかと。 首を傾げる桜子の頭の上に軽く顎を乗せて、つまらなそうに説明する青藍の表情を見ることは出来ない。 「自分の鬼火の色と一緒だとコントロールしやすい。だから、この部屋は桜色で揃えてある」 「……青藍の部屋はみんな青いの?」 頭の上で青藍が、フッと笑ったのが分かる。 「なによ!」 「いや、やっと俺の名を呼んだな」 なにがそんなに面白いのだろう。 くつくつと笑う振動が、笑われているはずなのに、なぜか嫌ではなかった。
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