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「ほら、よそ見をするな」
どんな顔をしているのか見ようと首をひねると、途中で大きな手に阻まれた。
どうやら、このベッドを所定の位置にうごかさないと、青藍の顔を見れないらしい。
別に見なければいけない、という訳でもないのだけれど。
「あれが元の場所に戻るイメージをしろ」
あれ、とはベッドのことだろう。
なんとなく、移動する過程をイメージするものだと思ったのだけれど、なにかが違うらしい。
ふわふわと宙に浮く、なんて過程をすっ飛ばして、ベッドがあったはずのガランとした空間にベッドがあるイメージをした。
次の瞬間、いきなりその場所にベッドが戻ってきて、途中の行程はさっぱり見ることが出来なかった。
「それでいい」
満足そうな青藍の声が頭の上から聞こえる。
少しだけずれていたベッドを、青藍は瞬きするような一瞬で調節していた。
「……魔法って呪文を唱えたりするわけじゃないのね」
「あぁ、そんなやり方をする奴もいる」
「え?」
「やり易ければ何でもいいんだ。
コントローラーは人それぞれだ」
「……私、コントローラーないんだけど」
「そうだな」
「……」
「欲しいなら用意してやってもいいぞ。杖と魔導書とローブとかな」
「結構です」
青藍が師匠で大丈夫なのか、若干の不安が芽生えた桜子だった。
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