第5章

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「ほら、よそ見をするな」 どんな顔をしているのか見ようと首をひねると、途中で大きな手に阻まれた。 どうやら、このベッドを所定の位置にうごかさないと、青藍の顔を見れないらしい。 別に見なければいけない、という訳でもないのだけれど。 「あれが元の場所に戻るイメージをしろ」 あれ、とはベッドのことだろう。 なんとなく、移動する過程をイメージするものだと思ったのだけれど、なにかが違うらしい。 ふわふわと宙に浮く、なんて過程をすっ飛ばして、ベッドがあったはずのガランとした空間にベッドがあるイメージをした。 次の瞬間、いきなりその場所にベッドが戻ってきて、途中の行程はさっぱり見ることが出来なかった。 「それでいい」 満足そうな青藍の声が頭の上から聞こえる。 少しだけずれていたベッドを、青藍は瞬きするような一瞬で調節していた。 「……魔法って呪文を唱えたりするわけじゃないのね」 「あぁ、そんなやり方をする奴もいる」 「え?」 「やり易ければ何でもいいんだ。 コントローラーは人それぞれだ」 「……私、コントローラーないんだけど」 「そうだな」 「……」 「欲しいなら用意してやってもいいぞ。杖と魔導書とローブとかな」 「結構です」 青藍が師匠で大丈夫なのか、若干の不安が芽生えた桜子だった。
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