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「そもそも、これがお前の言う『魔法』なのかも分からない」
「……触らないでベッド動かしたんだけど」
「魔法ってなんなんだ?」
「えーっと……普通ではできないこと?」
「じゃあ、普通ってなんだ?
俺たちは生まれたときから、これが普通だ」
混乱してきた頭を抱えていると、また青藍が笑う気配がする。
なぜか振り向かせては貰えないけれど。
「ねぇ、紅子ってどんな人」
どんな鬼?とは、なんとなく聞きづらかった。
鬼、と言葉に出すことに、ささやかな抵抗がついてまわる。
その抵抗が桜子には不思議だった。
もう、鬼を拒否するつもりはないのに。
「さぁな、俺も直接話したことはない」
急に声がひんやりとして、その場の空気がピリッとした。
桜子は、自分で聞いておきながら早速後悔していた。
青藍のまとう雰囲気が、重々しく冷たいものへと変わっていく。
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