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「さくちゃん、もうちょっと素直になったら楽かもよ?」
桜子と並んでソファに座った常葉の手には、既に2匹目のたい焼きが握られている。
「素直って、なによ」
桜子は眉間にシワを寄せると、あんこの少ない尻尾の端をちぎって、膝の上で喉を鳴らす珠に差し出した。
珠がクンクンとたい焼きの欠片の匂いを嗅ぐのを眺めながら、常葉の言葉のせいで以前友達が言っていたことを思い出してしまった。
『きりぃはさ、なんでも口に出しちゃって喧嘩売るくせに、本当に思ってることはなんにも言えないよねー』
そんなことはないと憤慨したのを、今も覚えている。
しかし、このときの友達の言葉は、あながち外れてもいなかったのかなと思う今日この頃だ。
あの子は元気にしているのだろうか。
きっと、桜子がいない日常にもなれてしまっているのだろう。
ふとした時に顔を出す自分の卑屈さが、桜子は嫌いだった。
けれど、嫌ったところで消えてくれないのもまた事実で、それは既に諦めている。
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