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橘紅子
どれほど艶やかな大和撫子が現れるのだろうと、桜子の肩には知らず知らずのうちに力が入っていた。
「さくちゃん、リラックスリラックス」
「……無理」
和装がお嫌いらしい月白さまの開く宴は、洋装で広々とした園庭での立食パーティーだった。
はじめてのパーティーと言う場が、立食パーティーだったのは桜子には幸いと言うべきなのかも知れない。
付け焼き刃のテーブルマナーを披露する機会がなくなってホッとしていた。
「さくちゃん、笑って。せっかく綺麗なんだからさ」
「……微笑むって難しい」
「そう?」
不思議そうに、そう言って桜子をエスコートするのはタキシード姿の常葉。
桜子は胸ポケットのハンカチの色が目の色と一緒だなと眺めた。
「なに、僕に見とれちゃった?」
「ううん、まったく」
「もー失礼しちゃうなー」
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