第5章

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橘紅子 どれほど艶やかな大和撫子が現れるのだろうと、桜子の肩には知らず知らずのうちに力が入っていた。 「さくちゃん、リラックスリラックス」 「……無理」 和装がお嫌いらしい月白さまの開く宴は、洋装で広々とした園庭での立食パーティーだった。 はじめてのパーティーと言う場が、立食パーティーだったのは桜子には幸いと言うべきなのかも知れない。 付け焼き刃のテーブルマナーを披露する機会がなくなってホッとしていた。 「さくちゃん、笑って。せっかく綺麗なんだからさ」 「……微笑むって難しい」 「そう?」 不思議そうに、そう言って桜子をエスコートするのはタキシード姿の常葉。 桜子は胸ポケットのハンカチの色が目の色と一緒だなと眺めた。 「なに、僕に見とれちゃった?」 「ううん、まったく」 「もー失礼しちゃうなー」
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