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「ほら、みんなさくちゃんに見とれてるよ」
「まさか、物珍しいだけよ。これじゃあ猿回しの猿ね」
「じゃあ僕が猿使い?」
「あら、猿とそっくりの猿使いってのも変ね」
作り物の微笑みを浮かべながら、小声で交わす会話はくだらないもの。
桜子の緊張をほぐすために、いつも通りおどけて話す常葉のミルクティー色の髪は柔らかなウェーブを生かすように後ろに撫で付けてある。
いつも適当にふわふわしている髪の毛がきちんと大人しくしているだけで、なんだか別な人のような気がするとはなぜだろう。
きっと、いつもの常葉がラフ過ぎるからだ、と紫苑と青藍を無意識に探していた。
いつもスーツ姿の彼等なら、タキシード姿もそんなに違和感ない筈だと思いながら。
「誰を探してるの」
「……別に」
「紫苑は橘のご令嬢をエスコートしに行ったよ。青藍は……どっかそこら辺かな」
「……ふぅん」
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