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「さくちゃんも何か飲む?」
「えぇ、喉がカラカラ」
今日は僕がエスコートする番。
順番が一番バッターだったのは、良かったのか悪かったのか。
さくちゃんが先程の自信溢れる微笑みとは売って変わって力なく微笑んだ。
しかし、その儚げな微笑みにどれほどの破壊力があるかなんて、きっとさくちゃんには分からない。
ふいっと側を離れてしまった青藍は、誰とも歓談せずに、少し高い場所から全体を眺めている。
いや、きっと、青藍の瞳に映っているのはさくちゃんだけだ。
でもさ、僕には分かんないんだよ。
青藍がたまに見せるさくちゃんへの好意が、本当にさくちゃん自身に向けられているものなのか、僕には分からない。
さくちゃんの向こうに蒼子さまを見ているのなら、そんなやつにさくちゃんは渡せない。
まぁ、どっちにしたって譲るつもりなんて欠片もないんだけど。
「じゃあ、なんかノンアルコール持ってくるね、ここで待ってて」
「ありがとう」
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