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「フフッ、桜子さまは紫苑さまがお気に入りなの?」
「そんなんじゃないです。
えっと……お兄さんみたいによく面倒をみてくださいますから」
「いいわねぇ、お兄さまとしては理想的だわ」
先程より少し砕けた話し方をする紅子に引きずられるように、桜子の話し方もたどたどしい堅苦しさを減らしていく。
しかし、それはどういう意味だろうか。
お兄さまとしては合格でも、旦那さまとしは……?
桜子の頭のなかを想いがクルクルと渦を巻く。
紫苑と常葉はまだ戻ってこないのだろうか。
「さくちゃんお待たせ」
桃でいい?
と、常葉が必要以上に顔を寄せて耳元で囁く。
いったいなんのつもりなのだろうかと思いながらも、ここでいつものように頭を叩くのは止めておいた。
なんといっても、常葉もNo.4っていう地位にいるのだから。
圏外の私が叩いたりした大変な騒ぎになりそうだもの。
「桜子さんとお話ししていたんですね。探してしまいました」
甘く微笑んで、紅子の手にグラスを渡す紫苑は、何故か挑むように微笑んでいた。
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