第2章

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ゴトッ 静かな部屋のなかで、ことさらに大きく響いたのは、桜子が本棚から一冊の本を落とした音だった。 背伸びをして届くか届かないかという高さの棚から少し無理をして、一冊抜き取ったせいで誤って隣の本を落としてしまったのだ。 分厚いその本が壊れていないかと、慌てて拾い上げた桜子の足元にヒラリとなにかが舞い落ちた。 かがみこんで拾い上げたのは一枚の写真。 「……私?……な訳ないか…………」 一枚の少しだけ色褪せた写真のなかで微笑むのは、白いワンピースの少女。 桜子によく似たその少女は、もしかしなくても母の蒼子だろう。 「……似てる、かな」 私より、幸せそうだけど。 柔らかく微笑むその笑顔に、複雑な感情が込み上げてきた桜子は、パタンッと写真を本に挟むことでその感情を打ち消した。
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