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薄暗い部屋の中に、男が3人。
背の高い3つの影は、大きめのベッドを囲むようにして立っている。
部屋のなかには、外の薔薇園から漂ってくる香りと、静けさが満ちていた。
始めに、その静けさを破ったのは左端にたっていた、黒髪にスーツ姿のどこか和の雰囲気を漂わす、端正な面に切れ長の瞳の鋭さが際立つ男だった。
「で、起きるまで待てばいいのか?」
よく響く低い声に、感情の揺れはみられない。
「大丈夫かな……ずっと飲まず食わずで月光も浴びてなかったみたいだし……」
心底心配そうな声で返事をしたのは、ほの暗い月明かりのなかでも金色に輝く髪をくしゃりとかき上げた男。
麗しいと言っても過言ではないその顔は、心配のあまり泣き出しそうに歪んでいる。
黒髪の男とは対照的に、感情が露になった声だった。
「返事になっていない」
「待つしかないでしょ?
弱りきってるのを叩き起こしたって、何も聞くことなんて出来ないよ」
あきれた声を出すと肩をすくめ見せたのは、前の二人の男に比べてだいぶ年若そうな男……いや、少年だった。
やわらかそうな茶色の巻き毛が、天使のように愛らしい顔を縁取っている。
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