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「それにしても、蒼子さまにそっくりだよね」
「色が違いすぎる」
「そりゃあ、日本人と混じりあったんだもん。これくらいでもかなり薄い方なんじゃない?」
大きめのベッドでは、静かに目を閉じて桜子が眠っている。
真っ白な枕の上に、染めているわけではないらしい淡いミルクティー色の長い髪が緩やかに波打っていた。
確かに、透き通るような肌の色も日本人としては白すぎる程だ。
「白銀の蒼家の色じゃないだろう」
「まぁ、それはハーフなんだもん。
でも、色以外は蒼子さまに生き写しだし、間違いなく直系の血筋ではあるよね」
「しー、そんなに騒いだら起きちゃいますよ」
祖父の死によって、泣き暮らしていた桜子は、まだ自分があの小さな木造の家から移された事を知らずに眠っていた。
その弱りきった体に栄養分を与えるために、ほっそりとした白い腕には針が突き刺さっている。
そこから伸びる管に、ポトリポトリと点滴の液が落ちていた。
「月光だけでは生きていけない蒼家など、誰も認めないだろう」
「もー!彼女で途絶えさせるわけにはいかないってのは、もう納得したんでしょ?大人の癖に往生際が悪いな」
「……口の減らないガキだ」
「二人とも、喧嘩なら外でやってください」
金色の髪の彼に外に追い出されたのは、黒髪の男と巻き毛の少年。
ひたすら桜子が目を覚ますのを待っているのにあきあきしていたらしい彼らは、これ幸いとばかりに部屋を後にした。
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