50人が本棚に入れています
本棚に追加
…それは一体どういう事ですか?
『…ロード・レアモン。貴方は純粋で真面目すぎる。
貴方はただ一心に主人を思い、心を尽くしているのに何故‘それ’を押し留めるのです?』
…それ、と言うのは?
『主人を独り占めしたい独占欲です。
貴方は真面目で我慢し過ぎるから、心が辛くなるのです。
本当は今もふつふつと、業を煮やしていると言うのに…欲望のままに解放させなくて宜しいのですか?』
私はそこで目の覚める思いがした。顔を上げる。
欲望を解放する…?
その意味を思い、幾らか狼狽する。
‘内なる声’は尚も私に語り掛ける。
『ええ、ええ。
私は知っていますとも。貴方が誰を一番疎んでいるのかを…』
…それは。
私はふと立ち上がり、室内から廊下へ移動する。
あの方がいつもいらっしゃる場所、ガラス張りのAIラボラトリーを視界に入れる。
…ああ、我が主人。レグルス・リオル様。
そのお姿を拝見するだけで何と心が癒される事か。
しかし、そう思うのも束の間。私は反射的に眉をひそめた。
『貴方の主人を独占しているのは、あの男でしょう?
コードナンバー008.ユーゼル・アスワン』
不意に図星を突かれ、グッと奥歯を噛み締める。
最初のコメントを投稿しよう!