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あれが果たして正解だったかどうかも分からないが、‘MOTHER’というワードを聞いてから‘内なる声’は私に語り掛けなくなった。
レグルス様の為に用意した診療所の一室とラボラトリー。
主人は今日もこの場所へ帰って来ないかもしれない。
ただ心を尽くし、側でお仕えしたいと思っても、あの方は自由奔放で私の元に留まっては下さらない。
E.Sになってからはむしろ私よりもパートナーのスピカ・リスナーと時間を共にする事の方が多いだろう。
更には私が過去、黒い感情を爆発させ、やっとあの男を引き離したというのに。
我が主人は既に008.と繋がっているかもしれない。
抜け落ちた記憶から自身の行動が計り知れない事と、そういった心配事が私を酷く落ち込ませた。
『ああ…何と嘆かわしい。お可哀想なロード・レアモン。
でももうそんなに落ち込む必要はないのですよ?』
私はハッと目を見張った。
実に久方ぶりとも言える‘内なる声’に耳を傾ける。
『貴方の主人はただエゾンウイルスの消滅の為、一時貴方の元を離れているだけです。
それに、最終的にはきっと貴方を必要とし、貴方に会いに来られる』
…どういう…意味ですか?
私は眉をひそめた。
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