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「…とりあえず。変なウイルスは退治出来たよ」
俺は‘彼’の墓石に目を落とし、小さく笑みを浮かべた。
今いるのは新しく建てられた明るく綺麗な霊園墓地。ここのところ、頻繁にこの地へ足を運び土葬した彼らを弔っている。
俺が見ているのは薄いグレーの石で、“ユーゼル・アスワン。ここに眠る”と掘ってある。
彼の最期を思い出すと、未だに目頭が熱くなるけれど、国にはJr.というあの複製が居てくれるから、俺の心は幾らか救われている。
エゾンが国から消え、本部での療養中。俺はJr.にこの霊園を建てろと命じた。
国の責務として、即刻あのC-oneラボを別の場所へ移せ、と。
Jr.はキョトンとし、その目は何故と物語っていた。だから事の重大さが伝わるように説いた。
「良いか、Jr.。俺はあの窪地に、かつての研究員達を埋めた。
このままあんなでかい建物で蓋をし続けてみろ。元のお前はともかく、あのエリサ女史が化けて出るぞ?」
Jr.はゾッとしたのか顔を歪め、すぐ対処すると言っていた。
脅した俺も言った後で気付く。
エリサ女史の亡霊か…。
そら恐ろしい。
ともすれば、背後から「レグルス!」と怒鳴られそうだ。
くわばらくわばら。
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