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フッと口元を緩め、振り返る。
「…よお。スピカ」
意図せず、自然な笑みを浮かべると彼女は破顔し、近付いて来る。
エゾンが国から消え、E.Sが廃止となったので、無論パートナーも解消したが、どういう訳かスピカは前以上に俺に懐いている。
通信機や電子メールでもよく連絡が入る。
新しく出来た弟機との生活を始め、販売の仕事もこなし、色々と充実している筈だが未だに俺の事が気にかかるらしい。
確かに、俺は人間でありながら尚もしつこくアンドロイドの振りをしているし、彼女の言う“オリジナルのレグルス様”だし。
無理も無いと言えばそうなのだが。
俺は必要以上に国の動体と関わるべきじゃない、と。今ではそう思っていた。
何故なら、俺は必ず老いるし、いつ死ぬか分からない身だからだ。
ましてやESPなどと言う得体の知れないエネルギーを使うのだから、通常の人間みたいに寿命が長いとも思わない。
俺の心臓が止まるのは今日かもしれないし、明日かもしれない。
だからこそ今自分がやるべき事、やりたい事に貪欲に励んでいる。
「…何と無くここにいる気がして。仕事も終わったし、シューク飛ばして来ちゃいました」
そう言ってスピカはあどけなく笑う。隣に並んだ。
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