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「…だから、その。あんまり情を持たれても、ずっと一緒には居られないし。急に俺が居なくなったら、スピカは悲しむだろ?」
残される者の気持ちは痛い程分かる。だからこそシビアかもしれないが、俺は彼らと距離を置くべきなんだ。
スピカは考えた事も無かった、と言いたげな瞳で絶句していた。
不安一色を浮かべ、ともすればブンブンと首を横に振る。
「それでも、構いません! それに、情、とか。今さら遅いです。
だってあたしは、もうユーゼルさんの事が大好きですから!」
俺は真顔でスピカを見ていた。二、三度瞬きを繰り返す。
スピカは胸の前で両手を握り締め、真剣な目をしていた。
…大好き、と言うワードは。
多分俺の記憶が正しければ、過去、あの母親に言われたきり誰からも聞いた事が無い。
「…ありがとう」
しんみりと、それでいて僅かに胸の内が温まる気配がした。
スピカは小さく頷き、急に俺へと抱きついた。
「…レグルス様だから、じゃ有りません。
あたしにとってはユーゼルさんだから、大好きだし、大切なんです。
だから。ずっと側に居たいんです。駄目ですか?」
顔を上げたスピカに、ふとドキリとした。
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