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今まで少女だと、自分の娘みたいな感覚で見ていたが、こんな大人びた表情もするんだな。
親の様な、兄の様な、説明のつかない感情を一動体に抱いてしまう。
俺はスピカの前頭部に伸びた、二本の触覚に触れ、頭を撫でた。
「…良いよ。なら俺が死ぬまで、側に居てくれ。俺は今後もやりたい研究に没頭するし、国に縛られる役職へも就くつもりは無い」
…ただ心臓が止まるその日まで、スピカと共に生きる。それも悪く無いな。
俺は口元を緩め、小さく微笑んだ。
スピカは嬉しそうに、満面の笑みを浮かべ、また俺に抱きついた。
何故こうも懐かれてしまったのか、全く意味が分からない。
霊園墓地の真ん前で、俺は一体何をやって居るんだ。そう思うと急に恥ずかしくなった。
「…行くぞ」
俺はスピカを引っぺがし、先を歩く。
「あ。待って下さいよー」
スピカはへへ、と純真無垢に笑い、また隣に並んだ。
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