SCN-008 ユーゼル・アスワン

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今まで少女だと、自分の娘みたいな感覚で見ていたが、こんな大人びた表情(かお)もするんだな。 親の様な、兄の様な、説明のつかない感情を一動体に抱いてしまう。 俺はスピカの前頭部に伸びた、二本の触覚に触れ、頭を撫でた。 「…良いよ。なら俺が死ぬまで、側に居てくれ。俺は今後もやりたい研究に没頭するし、国に縛られる役職へも就くつもりは無い」 …ただ心臓が止まるその日まで、スピカと共に生きる。それも悪く無いな。 俺は口元を緩め、小さく微笑んだ。 スピカは嬉しそうに、満面の笑みを浮かべ、また俺に抱きついた。 何故こうも懐かれてしまったのか、全く意味が分からない。 霊園墓地の真ん前で、俺は一体何をやって居るんだ。そう思うと急に恥ずかしくなった。 「…行くぞ」 俺はスピカを引っぺがし、先を歩く。 「あ。待って下さいよー」 スピカはへへ、と純真無垢に笑い、また隣に並んだ。
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