第1章

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 湯呑をお盆の上に並べる俺に、上からひょこりと頭を下げる小西君。ひょろりとスレンダーではあるけど、彼は俺より少しばかり背が高い。  いつも元気にニコニコ愛想がいい。背の高い割には声も高めで、何より口調も幼く学生っぽさを残す彼は、同僚というよりも部活の後輩的な感覚だ。  俺に懐いてもくれてるしね。余計そう思えるのかもしれない。  小西君は今年うちのチームに入って来て、俺がお世話役というか、彼のサポートを仰せつかってるってわけだ。自分もついこの間まで同じ立場だったクセに、そんな小西君をすっかり微笑ましく見ちゃってる。  俺も偉くなったもんだ。  と、いうことで、二人でみんなにお茶を配ってまわった。  部長が首をグルグル回して言う。 「お、ありがとな。あ~。長時間バスに揺られるのも疲れるな。温泉行くか!」 「さっそく行きますか! みんなで」  部長に続いて新田さんのお言葉だ。  男ばかりでぞろぞろと本館を目指した。  本館に入ってすぐ、通路の左側に宴会場らしき大広間がみえた。多分、ここで俺たちも晩飯を食べるのだろう。それを通り過ぎると大きな二つの看板。「男湯」と奥に「女湯」。  紺色の『ゆ』の暖簾をくぐるなり、壁にぐるりとベンチ状の座れる休憩スペース。中央に火鉢が置いてあって、ウォータークーラーや自販機も置いてあった。その奥に衝立があって、脱衣所。  棚にはカゴがズラーッと並んでいる。服を脱いでカゴに入れると、隣で小西君がボソッと呟いた。 「佐伯さん。肌、綺麗っすね」 「いやんスケベ」  冗談で返した俺に俯き顔を赤くする小西君。おいおい、やめてよ。なんて、これが部長だったらゲゲッだけど、小西だし。俺は小西君の肩をバシッと叩き、「あはは」と笑って風呂場へ向かった。  室内には大浴場と、檜風呂、電気風呂、サウナ、水風呂。水風呂の横にあるドアを開ければ、広々とした岩風呂があった。  源泉かけ流しのうっすら赤いお湯。一人用の壺湯、打たれ湯や、寝湯もある。  身体を洗った後、一通りあっちこっち浸かって温泉を楽しんだ。屋内は制覇した。残りはサウナと水風呂か。
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